展望台から見下ろすだけでも圧巻のブライス・キャニオン国立公園(Bryce Canyon National Park)。でも、ぜひ谷底まで下りてみてください。 尖塔(フードゥー)を見上げる景色は、上から眺めるのとはまるで別世界です。ここでは2015年1月に歩いたトレイルを紹介します。
おすすめは「クイーンズ&ナバホ・コンビネーション・ループ」
定番にして大本命が、クイーンズ&ナバホ・コンビネーション・ループ(Queen’s/Navajo Combination Loop)。公園の公式ガイドでも「世界一の3マイルハイク(World’s Best 3-mile hike!)」「いちばん人気のトレイル」と紹介される、ブライスを代表するコースです。全長は約4.6km(3マイル)、所要2〜3時間。
ルートは、サンセット・ポイントから谷底へ下り、クイーンズ・ガーデンを抜けてサンライズ・ポイントへ登り返し、最後はリムトレイル(尾根の道)でサンセット・ポイントへ戻る周回です。公式には時計回りが推奨されています(春〜秋は馬のツアーと正面で出会わずに済む、という理由もあります)。下りも登りもけっこう急なうえ、標高約2,500mの高地は息があがりやすく乾燥もしているので、水は多めに用意しましょう。

黄色が冬季おすすめのコンビネーション・ループ
※地図は、ブライス・キャニオン国立公園の公式ニュースレター『The Hoodoo』2013–2014年 秋・冬・春号(PDF)より引用しました(米国国立公園局の刊行物)。
持っていくと便利なもの
- 水:たっぷり準備を。途中で補給はできません。
- 履き慣れたトレッキングシューズ:冬は雪道・氷道になるので、防水性のあるトレッキングシューズやスノーブーツがおすすめ。
- 簡易アイゼン:冬は上り下りが格段に安心になります。
なお名物のウォール・ストリート区間は、氷や落石の危険がある冬〜早春は閉鎖されることが多い区間です(その年の状況しだい。閉鎖中もトゥー・ブリッジズ側を通ってループは歩けます)。冬に歩くときの詳しい注意点は、こちらの記事へ。
ナバホ・ループトレイル(Navajo Loop Trail)
サンセット・ポイントから出発する、短いけれど急なトレイル(往復約2.2km・1〜2時間)。下りはじめて1kmほどは、両サイドの岩が壁のように迫る狭い区間で、見上げると圧倒されます。途中では、名物の岩の回廊「ウォール・ストリート」(Wall Street)や「トゥー・ブリッジズ」(Two Bridges)、後述のトール・ハンマーなどが見られます。公式には時計回りでの周回が推奨されています。なお、私が1月に歩いたときはウォール・ストリート側が閉鎖されていたため、トゥー・ブリッジズ側を通りました(晩秋の11月に来たときは通れたので、季節で変わります)。

見上げると岩壁が迫ります

存在感のある高い木
クイーンズ・ガーデン(Queen’s Garden)
ナバホ・ループを下りきると、クイーンズ・ガーデンへ。谷底へのいちばん楽な下りとされるエリアで、緩やかなトレイルが続き、木々も多く、オレンジ色の尖塔群を見上げる風景が広がります。サンライズ・ポイント側から往復するなら約3.2km・1〜2時間。短い脇道(スパー)の先には、名物フードゥーのクイーン・ビクトリア(Queen Victoria)が待っています。

木々と尖塔のコラボレーション

まさにオレンジの壁
いろいろな尖塔(フードゥー)たち
尖塔はさまざまな形をしていて、なかには公式に名前がつけられたものもあります。トール・ハンマー(Thor’s Hammer)とクイーン・ビクトリア(Queen Victoria)は、このトレイルで見られます。

トール・ハンマー

クイーン・ビクトリア
ちなみに、ナバホ・ループ側で見られるトール・ハンマー(Thor’s Hammer)は、サンセット・ポイントの展望台からも見つけられます。
フードゥーはどうやってできる?
谷を歩くと「この尖塔はどうやってできたの?」と気になってきます。じつはブライス・キャニオンは、厳密には「キャニオン(峡谷)」ではありません。 峡谷は川の流れが削ってつくりますが、ここの主役は水の凍結・融解です。
公園では1年に約200日も、昼に溶けた雪や氷が夜に再び凍ります。水は凍ると体積が約1.1倍にふくらみ、岩の割れ目を内側から押し広げます。こうして岩の壁(フィン)に穴(ウィンドウ)が開き、それが崩れて、あの尖塔(フードゥー)が残されていくのです。赤い色は鉄分、白い層はより純粋な石灰岩——という地層の違いが、縞模様になって表れています。
「I Hiked the Hoodoos!」で楽しむ
ブライスには 「I Hiked the Hoodoos!(フードゥーを歩いたよ!)」 という、ちょっとした宝探しプログラムがあります。トレイル沿いに置かれた専用のベンチマーク(記念プレート)を探し、合計3マイル(約4.8km)以上を歩いて、プレートの拓本か一緒に写った写真を撮ると、記念の品がもらえるという仕組み。
定番のクイーンズ&ナバホ・コンビネーション・ループには、このベンチマークが2つあります。ただ歩くだけより目的ができて、子ども連れでも楽しめます(詳細はビジターセンターで確認を)。
歩く前に知っておきたい安全のこと
谷底トレイルは下り始めが楽な分、帰りは必ず登りになります。公式も「疲れる前に引き返す」ことをすすめています。無理のない計画を。
- 水:1〜2時間ごとに1リットルが目安。乾燥した高地なので、こまめに。途中に補給場所はありません。
- 靴:足首を支えるグリップのよいハイキングブーツを。サンダルやスニーカーは危険です。
- 標高:リムでも2,400m前後、最高地点は2,778m。普段の約7割の酸素量で、軽い運動でもめまいや吐き気を感じることがあります。
- 落石:多くのトレイルで起こり得ます。落石を見聞きしたらその場を離れてください。
- 馬とすれ違うとき:春〜秋は一部トレイルを馬のツアーも使います。馬が優先なので道を譲り、係員の指示に従いましょう(時計回りに歩くと正面衝突を避けやすいです)。
まとめ
ブライス・キャニオンは、展望台で全景を眺めたら、ぜひ谷底のトレイルへ。クイーンズ&ナバホのコンビネーション・ループなら、狭い岩の回廊から穏やかな庭園、名物フードゥーまで一度に楽しめます。高地&乾燥なので、水とシューズの準備だけは万全に。
展望台や冬の楽しみ方はこちらへ。